ルスヴン卿
| 分 類 | 近代文学、ヨーロッパ伝承 |
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Lord Ruthven(ロード・ルスヴン)《ルスヴン卿》【英語】 | |
| 容 姿 | 青白い顔の年齢不詳の美男子。 |
| 特 徴 | 純粋な若い女性を堕落させることを好む吸血鬼。 |
| 出 典 | ジョン・ポリドリ『吸血鬼』(1819年)ほか |
貴族吸血鬼ルスヴン卿!?
ルスヴン卿(ロード・ルスヴン)は貴族として現れる吸血鬼。ジョン・ウィリアム・ポリドリの怪奇小説『吸血鬼(The Vampyre)』(1819年)に登場する。年齢不詳の美男子だが、青白い肌と無表情さで社交界の場で異彩を放っている。
作中では、若いイギリス紳士のオーブリーがロンドンの社交界の場でルスヴン卿に興味を抱き、接近するところから始まる。2人は意気投合してヨーロッパ旅行を決める。しかし、ルスヴン卿は悪人に施しを与え、弱者を破滅に導き、純粋な若い女性を堕落させることに執着した。そしてローマの社交界の場でオーブリーの妹に興味を抱くに至り、遂にオーブリーとルスヴン卿は仲違いする。
オーブリーはルスヴン卿と分かれて単身、ギリシャを訪れるが、宿屋の娘イアンテと恋に落ち、彼女からギリシャの吸血鬼(ヴリコラカス)の伝承を聞く。オーブリーは迷信だと信じなかったが、その後、遺跡巡りをしていたオーブリーは、山小屋で女性の悲鳴を聞き、助けに入る。謎の人物は非常に怪力でオーブリーは死を覚悟するが、松明を掲げた村人たちが助けに来て逃走し、オーブリーは一命をとりとめる。襲われていた女性はイアンテで、首を噛みつかれて死んでいた。男は吸血鬼だったのである。
寝込んでいたオーブリーを看病したのは、たまたまギリシャを訪れていたというルスヴン卿だった。2人は和解し、一緒にギリシャを旅する。その途中、山賊に襲われ、ルスヴン卿は肩を撃たれて死ぬ。死の間際にルスヴン卿は「私の死は1年間と1日、誰にも伝えるな」と誓わせて息を引き取る。
オーブリーがロンドンに戻ると、死んだはずのルスヴン卿が現れた。そして「私の死は1年間と1日、誰にも伝えるな」という誓いを改めて確認すると、オーブリーの妹を誘惑して、結婚を約束する。誓いのためにルスヴン卿が吸血鬼であることを誰にも言えずにいるオーブリーは次第に衰弱していく。そして、約束の1年間と1日が経過した日、オーブリーは全てを人々に告白して息を引き取る。まさにその日がルスヴン卿とオーブリーの妹の結婚の日で、人々が妹の部屋に駆け付けると、すでに妹は吸血鬼の餌食になっていた。
カーミラ、ドラキュラに続く貴族吸血鬼の原点
以上がポリドリの『吸血鬼』の粗筋である。その後のルスヴン卿の足取りについては、ポリドリは描いていないので、どうなったかは分からない。
いずれにしても、ポリドリは作中で、ギリシャ伝承に根差したヴリコラカスに取材しながら、全く新しい「貴族的な吸血鬼」を創造した。このポリドリの『吸血鬼』はロマン主義吸血鬼文学の始祖とされ、以降、シェリダン・レ・ファニュの『カーミラ』(1872年)やブラム・ストーカーの『ドラキュラ』(1897年)など、多くの吸血鬼小説に多大な影響を与えていった。
《参考文献》
- 『怪奇幻想の文学 1 真紅の法悦』(編:紀田順一郎/荒俣宏,新人物往来社1977年)
- 『The Vampyre』(作:John William Polidori,1819年,Project Gutenberg)(英語)
Last update: 2026/03/22
